No.013 / 2020.08.20

TOPICS / goods GLOCAL STANDARD PRODUCTS

コーヒー用具や琺瑯(ほうろう)製品で当店おなじみのGLOCAL STANDARD PRODUCTS(グローカルスタンダードプロダクツ)
横浜に拠点を置き、新潟県燕市をはじめとする国内工場での製作にこだわったオリジナル家具・雑貨を卸販売する企業です。代表の石黒さんにお話を伺うと、そこにはものづくりに対する思慮深い姿勢がありました。

 

コンセプトに掲げる「不変で不偏」___。
年月を経ても変わらない「ぶれない精神」と、流行に影響されすぎず かつ客観的なデザインを行う「偏らない精神」。
この二つの精神がGSPの商品企画の根底にあるそう。美しいスタンダードなデザインと確かな品質で愛される、GSPの魅力と、製品づくりの背景をご紹介します。

 


 

GSPの代表作「TSUBAME」琺瑯シリーズ

TSUBAMEシリーズを生産する新潟県燕市は日本の誇る金属工業地帯。刃物や洋食器を中心に、国内生産シェアの大半を占めています。
TSUBAMEの琺瑯がけをしているのは燕市の中の小さな小さな工房。仕上がってきた器物(琺瑯をかける前の状態)に琺瑯を吹き付けてくれるのは、その土地のおばあちゃん職人です。季節によって釉薬の調子を見て、釜の温度を調整し、TSUBAMEの琺瑯製品が完成します。
それは彼女たちの試行錯誤の上、得た経験から生まれてきたもの。夏は釜の熱さで高熱の工房、冬は新潟の極寒の環境の中、常に琺瑯を吹き付け窯入れを行っています。
ライン生産品のように一律に乱れの無い仕上がりではなく、多少の個体差を生むのは手作業での職人仕事ならではですね。

※※ 琺瑯(ほうろう)とは?※※
金属にガラス質の釉薬を高温で焼きつけたもの。表面をガラス質で覆うことでにおいが付きにくく、味質も変わりにくくなるため、料理・飲み物本来の風味や香りを楽しむことができます。琺瑯製品は鉄の器物に琺瑯釉薬をかけるのが一般的な方法ですが、TSUBAMEシリーズは錆に強いステンレスに琺瑯を直接施した製品になります。錆止めをかける工程を省くことができるので、鉄製のものよりも薄く軽い仕上がりを実現。ステンレス琺瑯は難しい技術が求められるため、現在でも世界的に珍しいスペックです。

(上)琺瑯かけをする前の食器本体を製造する工場の様子。TSUBAMEシリーズの食器は軽くて錆びにくいステンレス製です。
(下)手作業で琺瑯をかける工程。ドブつけ(ディッピング)ではなく、吹き付けの珍しい手法をとっています。

きれいに琺瑯をかけたものを高温の釜で焼きつけていきます。完成までには吹き付けと焼きつけを何度も繰り返します。

 


 

アーカイブの活用と伝承

GSPを語る上で欠かせないのは、アーカイブを取り入れ、それを継承する製品づくり。
現代から未来にかけて使用される中で、評価され耐えうるかを判断し、それに満たしたものを復活させる。そして復活させたからには継続させる努力をする。
例として岡本太郎氏のサイコロ椅子が挙げられます。当時製作に携わった山川譲氏が製作監修を行い、「岡本太郎生誕100年記念事業」の一環として復刻を果たしました。
有名な芸術家の作品のみならず、地域で培われた素材・技術・型にも目を向け、新たな製品として甦らせることも。
金属加工業が盛んな燕市で製作される「TSUBAME Canisterシリーズ」や、奈良県で作り続けられている立体的な樹脂サンダル「GSP Sandals」などがその例です。

(左)燕市で製造されるステンレス製のキャニスター。つや消しのヘアライン仕上げがシンプルで美しい人気のシリーズです。
(右)グリップ力が高く、厚みのあるソールが疲れにくいことから小笠原諸島の漁師たちが履いていた「ギョサン」。鼻緒とソールが一体成型のためとても丈夫なつくりです。

 


 

生活に寄り添う製品、ものをつくることの責任

「道具は人の手に渡り、経年・使われる中でその様を変化させ、育まれ、本当の姿になっていくことが理想」だと、石黒さんは語ります。
TSUBAME RATTANシリーズを例にとると、まっさらなラタン(藤)が人の手によって角が取れ、徐々に飴色に変わっていく様子を愛でる先に、自分の道具として成長することをイメージして制作しているそう。無機質なステンレスにボタニカルなラタンが巻き付いた、素材の相性という面白さもありつつ、味わい深く変化していく過程をも楽しめるお品です。

過去からの遺産・資産に、時に新しい技術を取り入れ、編集し、現在から未来へと使い続けてもらえる製品づくりを目指しているGSP。
古いものも新しいものも吸収する柔軟さ。一過性のものではなく、産地の生活を含め、技術や歴史を守り継いでゆく責任。ものを生み出すということに真摯に向き合う姿勢が、GSPが愛される所以なのかもしれません。

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