No.249 / 2025.05.25
TOPICS / zakka THINGS FELT BUT NOT QUITE EXPRESSED

感情をきちんと言葉にすることは難しい。けれど確かに「そこにある」とわかる。
Sohrab Hura(ソーラブ・フーラ)は、インド出身の写真家。これまで国際的に高く評価されてきた彼が、本作では写真ではなくパステル画で「心にうまく言えないもの」を描きました。
写真家として積み上げた“瞬間を切り取る視点”を、より柔らかく、より曖昧に。表紙の絵からも伝わるように、未整理の感覚や言いようのない瞬間を、正面から見つめています。

ページをめくると、ありふれた日常が瑞々しい色彩で広がります。
犬が泳ぐ場面は、単純に愛らしいのに、どこか胸の奥に触れてくる。
「楽しい」という感覚の裏側にある、ちょっとした寂しさや温度差まで絵の中に漂っているのです。

別のページでは、人々がスケートリンクを賑やかに滑っています。
冬の夕暮れの風景は、描かれている人それぞれの仕草や表情が不思議とリアル。
眺めていると、自分の記憶のどこかと重なり、懐かしい寒さまで思い出させてくれます。

そして急に現れる、パンダと猫の丸い背中。
思わず笑ってしまうユーモアが、深いテーマの合間に差し込まれています。
悲しみと冗談、孤独と仲間。異なる感情が同じページに同居する自由さが、この本の大きな魅力です。

この本は、ただ眺めるためのアートブックではありません。
手に取ってページをめくると、自分自身の感情や記憶と対話しているような時間が流れます。
日常の中で、静かに気持ちを整えてくれる存在になるはずです。

完璧であることより、揺れているところにこそ人は触れたくなる。
『Things Felt But Not Quite Expressed』は、その揺らぎをかたちにした、やさしい一冊です。
THINGS FELT BUT NOT QUITE EXPRESSED by Sohrab Hura
10450yen
