No.217 / 2025.04.17

TOPICS / zakka ふだんの手に、しっくりくるもの

日用品を選ぶとき、“何でもないこと”の積み重ねをどう受け止めるかで、その後の使い心地は大きく変わってくる。
Kiln Mugは、見た目こそ非常に控えめだが、手に取るとすぐに「ちゃんとしたものだ」とわかるつくりになっている。岐阜・多治見の窯元で丁寧に焼かれた磁器のマグカップで、容量は約330ml。コーヒーをたっぷり淹れてもまだ少し余裕があるサイズ感は、紅茶やスープなどにも使いやすく、家に一つあるとつい手が伸びてしまう。

取っ手の丸みと太さ、そして口に触れる縁の厚み。使ってみると、どれもがわざとらしくない程度に“整っている”ことに気づく。釉薬には窯変が施されていて、色はアイボリーとブラウンの2色。どちらも過剰に主張せず、器らしい落ち着きをまとっているが、それぞれの表情にわずかな揺らぎがあるのがむしろ魅力だ。

電子レンジにも食洗機にも対応しており、実用品としての条件もきちんと満たしている。つまり、毎日使う道具としての“気の利き方”が非常にバランスよく仕上がっているということだ。

気取っていない。けれども、雑ではない。
そういう道具は、生活の中で長く残っていく。

Kiln Mugは、まさにそういう存在である。