パヴェル・フラヴァが1957年にデザインし誕生した、一輪挿し。
この作品はチェコの老舗高級ガラス工房でもある「EXBOR」を通して販売された、
優れた芸術性を含みながらもフラワーベースとして、一般的に販売されたアートガラスです。
一般的に買えない芸術品ではなく、商品として販売された芸術品は大ヒットし、人気を博します。

透明度が非常に高いカリガラスに縁はグラデーションの装飾、中心部は鮮やかなしずくが垂れるようなデザイン。
この時代に多い、柔らかな流線的なフォルムではなく、力強さと重みを感じさせるしっかりとしたフォルムに、
緩急のある流曲が美しい中心部は、ガラス彫刻家でもあるパヴェル・フラヴァだからこそできた作品です。
美術館にあるコレクションを見ても、この一輪挿しのような雰囲気を感じさせ、力強さは彼女がデザインするガラスの特徴のように思われます。
そしてガラス本体の美しさはさることながら、透明度の高いガラスを通した光の影も美しく、影まで考えられたデザインです。
花飾る花瓶としても使用できますが、花がなくともお部屋を飾るアートピースとも言えます。

元々は、教会のステンドグラスなどの製造から伝統的な工芸として栄えたチェコのガラス。
上記でも説明をしたパヴェル・フラヴァや彫刻家、メーカーなどが誕生したことにより、
ガラス製品の価値だけでなく、アートガラスとしてアートの分野でも代表的なアイテムとして地位を確立していきます。

チェコのアートガラスはハンドメイドの吹きガラスで作られることが多く、チェコ西部にあたるボヘミアが特に有名な産地です。
20世紀の初頭ではデキャンタやグラスなど、芸術品としての価値よりは商業的な製品の装飾が美しいガラス作品が多く、
ミッドセンチュリー期になると彫刻家やメーカーデザインする、芸術的なオブジェのようなガラス製品が特長的になってきます。
使うことを目的とした製品の中に見える美しさと、デザインされたモダンな美しさ、
どちらのガラスも美的観点は違えど、現代から見て古さや時代を感じさせないアートガラスです。
チェコのガラスの魅力は歴史の長さゆえに、時代や作り手によって特徴が変わるため一言では伝えない奥深さがあります。
少しずつではありますが、時代やジャンルにとらわれない様々なチェコのガラスを紹介していきますので、
お気に入りを見つけて、チェコガラスの世界を感じてみてはいかがでしょうか。